市大病院入院記録

古澤孝昌 手記


今回前立腺癌であることが分かり名古屋市立大学病院に入院し腹腔鏡下の全摘除術を受けました。初めて知ったことが多くあったことと、新しい市大病院の入院病棟の様子などを含め、入院経過を以下に紹介させて頂こうと思います。

発端

自分でも一応健康と思い、何も異常を感じていませんでしたが、たまたま何時もの医院での血液検査で、PSA(前立腺特異抗原)の検査も併せてやってくれた(先生は何気なく無意識でPSAの検査も注文したらしい)所、10を超える値が出た。

2ヶ月ほど間を置いて再度検査した所、やはり10以上であったので、泌尿器科のある総合病院での受診を勧められたので、市大病院への紹介状を書いてもらって H15/9月初旬外来受診しました。

検査入院

外来受診の結果は、即、生検(問題の箇所から組織を切り取って顕微鏡検査を行うこと)を行って癌が出来ているかどうかを確認するというものでした。このため H15/10月初旬検査入院しました。

インターネットから得た情報としては、PSA値が10〜20の時の癌である確率は約30% となっていましたので、納得の上検査を受けることが出来ました。

検査は直腸から生検用の針を前立腺の周囲6箇所に刺しサンプルを採取し顕微鏡で調べるものです。

検査入院の前にはCT・MRIの検査も受けました。

病名の決定

生検の結果は6箇所から採ったサンプルの内1個に癌があったというものでした。

この後他の場所への転移の有無を調べるため癌部分に集まりやすいRI(放射性同位元素)化合物を注射し約3時間後にレントゲン撮影するいわゆる骨シンチや骨を対象としたMRI検査も受けました。

これらの検査の結果として病名は『限局期の前立腺癌』であるとの告知を受け、どのような治療を行うかを決める段階に進みます。

治療方針

限局期の前立腺癌の治療は下記の3つの方法から、1つ又は複数を組み合わせて行われます。

  1. 手術により前立腺を摘出する。
  2. ホルモン療法:前立腺癌は男性ホルモンにより成長するためこれをコントロールして癌を抑える。
  3. 放射線療法:癌に放射線を照射してこれを殺す。
私の場合は初期の癌であったということで、今後の再発の確率が最も低いと考えられる1.の手術による治療法を選びました。

入院手術まで

いよいよ手術ということで H16/1/26 入院しました。

先ずは手術前の各種の検査です。検査項目は下記の通り。

  1. レントゲン撮影:胸部、下腹部
  2. 肺機能検査
  3. 心電図
  4. 尿流量測定・残尿量検査
  5. 膀胱内圧測定
  6. 膀胱鏡による観察
  7. 尿道造影検査 等

以上の検査を経て手術本番前の準備として、手術当日に胃腸内に残留物が無いようにする、手順があります。

これは全身麻酔により手術する時、胃腸などが動いて手術の妨げとなることを防止するため、麻酔と同時に筋弛緩剤も注射されるので、胃腸内を空にしておく必要があることに理由があります。又このため呼吸機能も停止してしまうため、手術時麻酔科の先生の役割が非常に重大であることを知りました。

手順は下記の通りです。

  1. 食事の変更と下剤の服用:手術日の3日前の夕食からそれまでのエネルギーコントロール食から繊維コントロール食に変更され、更に下剤を1錠ずつ服用。
  2. 前日昼食からは絶食、更に午後にはかなり強力な下剤を服用。
  3. 前日夜からは絶飲・絶食。
  4. 当日早朝に浣腸で止めを刺されることとなります。
  5. 最終的に手術室に入る直前に麻酔中でも分泌される、胃液を抜くためのチューブを鼻から挿入されて手術室へとなりました。

閑話休題

今回入院した名市大病院の入院病棟は、数年前から建設されていた新しい17階建てで、今年1月から使用を開始したばかりのものでした。

旧一般病室は6人部屋でしたが、新病棟では4人部屋で各部屋に洗面・トイレが付いていて、一人当たりの面積も広く快適な入院生活が出来るよう配慮されている、という感じでした。

私が入院したのはその11階南病棟で、名古屋の南方が一望でき遠く緑区黒石方面の給水塔まで望むことが出来ました。その他を含め以下の写真をご覧下さい。

病室より瑞穂通(左下は博物館)

病室より緑区方面

病室からの夜景(早朝)


日の出前の早朝に撮影(多少ぶれています)

廊下東端から東山方面


東山タワーとUHFテレビ塔(タワーの直ぐ右にデジタル放送塔がかすかに見えます)

手術後から退院迄

手術は2/6に実施。前述通り腹腔鏡下での前立腺の全摘出とその後、膀胱と尿道を縫合するものでしたが、勿論全身麻酔下のため本人は何も分からないうちに終わっていました。手術後の様子について以下に記します。

  1. 飲食について:翌朝までは水を飲むことも許されません。翌朝から少しずつ水を飲ませてもらえました。これは筋弛緩剤が抜けて胃腸が動き出したことが確認できて初めて可能になるからです。食事は翌夕食から始まりますが、おもゆ・3部かゆ・5部かゆ・7部かゆ・軟飯の順に各3食計5日間掛かって普通食に戻りました。
  2. 体に付けられた点滴・チューブ類について:@翌日昼頃には手術直前に付けられた胃液用のチューブ、A3日目午前には体内の液を抜くためのドレンチューブ(抜く時痛いかなと思って身構えたが全く痛くなかった)を抜いた。B鼻の所に付けられた酸素吸入も下記血中酸素量の改善に伴い翌日夕には中止。C点滴は止血を目的とするものと抗生物質が主体のようでしたが、3日目夕方で終了し後は内服用抗生物質を1週間服用。D最後は尿道に挿入された尿導管(?正式名不明)ですがちょうど1週間後に取れ、更に抜糸もされ、これで体には何も付いていない状態に回復しました。
  3. 各種検査について:手術後1・2日目は可搬式のレントゲンを使用しその後は3〜4日置きに3回レントゲン室に行って撮影。指先に挟むだけで測定できる血中の酸素量の測定(結果により酸素吸入は終了)。体温・血圧は手術後の夜はほぼ1時間おき、1週間は3回/日、その後1回/日程度。尿導管を抜く前には造影剤を膀胱に注入し、縫合部を確認する検査(膀胱造影検査)もありました。また採血、採尿検査、尿量測定が随時継続的にありました。
  4. その他:病気の特異性から、尿道管が取れてからの尿漏れの程度が完全復帰のための問題とされますが、幸いにも極めて順調に推移したため、術後2週間ほどで2/21に退院できました。退院後も日増しに改善しておりますので、近々ゴルフの練習を再開しようと考えて居ります。

終わりに

初めにも書きましたが全く自覚がないのに、この病気が発見できたのは本当に僥倖そのものでした。知らずに居ると、2年ほど先に腰痛などの症状が現れ、その時にはPSA値は1000を超え、各所に転移が見られるだろうとの事です。

私の場合、これでもまだ完全に無罪放免ではなく、今後毎月(1年間位?)PSA検査を続け再発しないか監視が必要です。

日本人の罹患率は数%との事ですが、不幸にもその1人となったことを、少しでも早く確認するためには、血液検査の機会があったら是非PSA値の検査もやって貰うよう依頼されることをお奨めして(50歳以上の方に)この報告を終わります。

見出しの下に病室からの素晴らしいご来光の様子を時系列順に配置しました。下に他の日のものをもう一枚大きく掲載しますので、ご鑑賞下さい。(鑑賞に耐えられない?!)

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